せっかち読みが倍増した世界で、太郎塾は何をしているのか
2026年9月14日
今日は授業の話ではなく、先週発表された一つの国際調査の結果について、塾としてどう受け止めたかを書いてみます。
世界の15歳に、いま何が起きているか
9月8日、OECD(経済協力開発機構)が「PISA2025」の結果を公表しました。世界約80の国と地域の15歳を対象に、3年ごとに読解力・数学・科学の力を測る、いちばん大きな国際学力調査です。
結果は、かなり厳しいものでした。OECD加盟国の平均点は読解力・数学ともに過去最低を更新し、3分野すべてで基礎的な水準に届かない生徒が「5人に1人」に達しています(前回2022年は16%)。
なかでも私が気になったのは、OECDが「せっかち読者(hasty readers)」と呼ぶ生徒の増え方です。文章を急いで読み、速いけれど間違った答えを出す。この層が、2018年から2025年のあいだにほぼ倍増したと報告書は述べています。
そしてOECDは、落ちている力を具体的にこう指摘しました。「情報を評価する力」「複数の情報源をつなげて考える力」「読んだものについて批判的に考える力」。これらこそAIの時代にもっとも重要な力なのに、まさにそこが落ちている、と。
日本は世界トップ。でも安心はできない
日本の結果には、二つの側面があります。
一つは明るい側面です。日本は科学・読解力・数学の3分野すべてでOECD加盟国中1位になりました。3分野そろって1位は、調査が始まって以来初めてのことです。
もう一つは、少し気になる側面です。読解力の点数は前回の516点から503点へ下がり、統計的にも意味のある低下でした。下がった中身を見ると、長い文章や複数の文章を読み解く力は前回と変わっていない一方で、「短い文章を速く正確に読む」という基礎の部分で正答率が落ちています。
そして日本でも、基礎に届かない生徒の割合は3分野すべてで増えました。上位層は変わらず、下の層が厚くなっている。平均点や順位だけを見ていると気づかない変化です。
太郎塾で、毎週やっていること
こういう結果を見て「だから読解力を鍛えましょう」と言うのは簡単です。ただ、それでは私自身が「せっかち読み」をしていることになってしまう。なので、太郎塾が具体的に何をしているのかを、あらためて書いておきます。
太郎塾の授業は答えが合っているかどうかより、「どうしてそう考えたのか」を言葉にすることを毎回求めます。 また、話を聞いて、本を読んで「ふ~ん、そうなんだ」は禁止。 これは論理国語でも、文章読解でも、クリティカルシンキングでも変わりません。
文章読解&探究の授業では、一つの文章を読んだあとに、「この文章で本当に言いたいことは何か」を自分の言葉で言い直してもらう事があります。速く読んで「わかった気」になることと、読んだ内容を自分の言葉で言い直せることは、まったく別のことだからです。そこから「筆者の言っていることは、他の見方からも成り立つか」「この話は、自分の身のまわりのどこにつながるか」と問いを広げていきます。
クリティカルシンキングの授業では、正解のないケースを使います。
たとえば「リレーの補欠を誰にするか」。子どもたちは意見を出し合ったあと、「私は〜と考えます。理由は2つあります」という型で自分の考えを文章にします。理由の中には、本文のどの情報から考えたのか、自分の体験と結びつけて何を思ったのかを入れてもらいます。今後は「宇宙庁の予算で、どの計画を3つ残すか」といった、より判断の難しいケースも扱っていく予定です。
AIについても、時折扱います。
教室の画面で私がAIを操作し、AIとの協業において言語化の重要性を伝えています。
また、AIがAIが出した答えを子どもたちと一緒に「これは本当だろうか」「どこを確かめればいいか」と検討する中で、AIは何ができるのか?を体感してもらっています。
「え!こんなこととまでできるの!?」と驚く子も。1年も経たずにAIの能力は飛躍的に高まるので、その肌感覚も体験もしてもらいます。
おわりに——「確かめるべき」とわかっていて、確かめているか
今回の報告書を読んでいちばん考えさせられたのは、点数の話ではありません。多くの生徒が「情報は複数の信頼できるところで確かめてから受け入れるべきだ」という考えには賛成している。それなのに、実際に確かめている生徒はずっと少ない、という指摘です。
わかっていることと、やっていることのあいだにある溝。
それを埋めるのは、知識ではなく習慣だと思っています。太郎塾がやっているのは、その習慣を毎週少しずつ積む作業です。
ご家庭でも、ぜひお子さんに「なぜそう考えたか?」を問いかけながら議論してみてください。そして親も分からないことは正直に「分からない」と言って一緒に考え、一緒に調べる。これが思考力や好奇心を育てることに繋がると思います!
■OECDサマリ抜粋

参考リンク(この記事で引用したもの)
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